愛されるすきまと、引かれる弱さ
1966年の有名な実験があります。クイズにほとんど正解する優秀な人物が、最後にコーヒーをこぼす。すると、こぼさなかった場合よりも魅力が上がったという結果でした。完璧さより、完璧な人のちょっとした失敗のほうが好かれる。よく紹介される話です。
ただ、この実験には紹介されにくい後半があります。同じ失敗を、成績が平凡な人物がやった場合。こちらは魅力が下がりました。
すきまには、順番がある
つまり、すきまが魅力になるのは土台とセットのときです。配信がちゃんと回っている、場の空気が心地いい、歌がうまい、話が面白い。そういう土台の上に乗った「お酒に弱い」「極度の方向音痴」「漢字が読めない」が、完璧さの緊張をほどきます。
これはとくに、見た目が武器のライバーさんに効きます。きれいな人に話しかけるのは現実でも勇気が要るのと同じで、初見さんは「変なこと言ったらどうしよう」と見るだけになりやすい。先にすきまを見せることが、話しかけていいよの合図になります。「きれい」と「話しかけやすい」が両立している枠は少ないので、揃うとそれ自体が強みです。
配信中にうっかり抜けているところが出て、そこがいちばんウケた日。心当たりのある人もいると思います。あれは事故ではなく、順番が揃っていたから効いていました。
愛される側と、引かれる側の線
もうひとつ、同じ「弱さを見せる」でも方向が真逆になるものがあります。線はここです。
愛されるすきま。聞いた側に何の負担も生まれない失敗や欠点。笑って愛でられて、その場で終わります。
受け止めに負担のある弱さ。聞いた側が「どうしてあげたらいいんだろう」と考え込むもの。抱えていること自体は自然なことですが、そのまま渡すと、聞いた側には好意より先に責任感が立ちます。
弱さを見せること自体が絆を作るのは本当です。分かれ目は中身の重さではなく、受け止める負担ごと渡していないか。重いほうの弱さは、配信の中で出すより、配信の外で手当てする方が本人も楽です。
完璧に見えることは強みで、すきまは、その強みを使えるようにするための鍵のほうです。
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